R7_専攻科卒業式式辞

専攻科看護科 修了式 式辞

 

 白石城を巡る沢端川のほとりに梅が咲き、ほのかな香りに新しい季節の訪れを感じる季節となりました。

 本日ここに、金上病院副看護部長の斎藤弘子様をはじめ、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜り、専攻科看護科の修了式を挙行できますことは、心より嬉しく思います。

 そして、これまでお子様の成長を温かく見守っていただいた保護者の皆様、修了生はここまで大きく成長しました。この日を迎えるまで、色々なことがあったことと思います。いよいよ修了という日を迎えることとなりました。本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございます。

はじめに、白石高校の校歌について話したいと思います。実は、二番の歌詞は、看護の道を志す皆さんの姿を讃えるものです。

白石川を往く水に 世々の歩みを想いつつ

易わらぬ生命尊きと

新たな時代の理想をば

常に求めて創造りゆく

我等の業を頌え友

 この中にある「変わらぬ命の尊さ」という言葉について、私の想いをお話ししたいと思います。

 さて、皆さんは修了式までの5年間という月日をどう感じていますか。長かったですか。それとも、過ぎてみると早かったですか?

 時の長さは、気持ち私たちは、楽しみでワクワクしながら明日を待つ日もあれば、反対に、緊張や不安で明日が来るのが怖くなる日もあります。 しかし、「今日の次に、必ず明日が来る」。 この当たり前だと思っている日常が、決して当たり前ではないのだと、死に直面して初めて気づくものです。

 私事になりますが、私は三年前、腸重積により緊急手術を行いました。切除した回腸からは悪性リンパ腫が見つかり、その後、半年間にわたる抗がん剤治療を経験しました。現在は幸いにも経過観察の身ですが、当時はまさに、明日が来ることがいつまで続くのだろうかと、不安の中にいました。

 開腹手術の後の苦しい時間、歩くことさえままならなかったリハビリの最中、そして抗がん剤の副作用に耐える日々。そのすべての場面で、私のすぐ側にはいつも看護師さんがいました。

 人生で初めて経験する大きな病の中で、私は、看護師という仕事がどれほど「命」に寄り添い、どれほど尊い業を尽くしているのかを、身をもって知りました。ですから、看護師は人々から必要とされ、心から称賛を贈られる仕事です。誇りをもって歩んでください。

 とはいえ、最初は戸惑うことが多いことと思います。初めての患者さんと接する時、きっと強い緊張を感じることでしょう。

 しかし、忘れないでください。対面している患者さんは、それ以上に緊張し、不安を抱えています。

 私自身、病床にいたとき、冷静を装ってはいましたが、心の中は不安でいっぱいでした。「不安を口にしても治るわけではない。看護師さんに話しても、何も変わらない」と思っていたのです。おそらく、同じように不安を抱えたまま、黙っている患者さんは少なくないと思います。

 そんな時、患者さんの心を開き、話を聴くために最も大切なことは何だと思いますか?

 それは、言葉を変えて、何度も聴いてみることではありません。

 「口角を上げること」——。まずは、笑顔です。

 看護師さんの笑顔を見て、初めて患者さんの緊張は緩みます。そこからが、本当の看護のスタートなのです。

 よく「第一印象」という言葉を耳にします。では、なぜ「第二印象」という言葉はないのでしょうか。

 答えは簡単です。第二印象というものは、この世に存在しないからです。

 人との出会いにおいて、最初の一瞬で決まる印象がすべてであり、それを取り戻すことは容易ではありません。だからこそ、まずは口角を上げ、笑顔で繋がること。患者さんの緊張を解きほぐすことが、何よりも優先されるべき最初の一歩なのです。

 看護の現場では、マニュアル通りにいかない現実に直面することもあるでしょう。良かれと思った善意が、時にすれ違う瞬間もあるかもしれません。そんな時こそ、原点に立ち返ってください。笑顔、そこから始まる、つながり。皆さんのその笑顔が、誰かにとっての『明日を生きる希望』になります。

 専攻科での学びを終え、新たな世界へ羽ばたく皆さんの前途が、光り輝くものであることを心より願い、式辞といたします。

 

令和8年3月1日

宮城県白石高等学校 専攻科看護科 校長 若林春日