R7_高校課程入学式式辞

 

高校課程入学式 式辞

 

 残雪の不忘山が白く輝き、白梅の爽やかな香の中、沢端川には水が清らかに流れています。校庭の桜も満開となり宮城県白石高等学校にもいよいよ春が訪れました。

 本日はPTA会長の滝深光昭様をはじめ、多くのご来賓の皆様にご臨席賜り、入学式を挙行できることを職員一同、深く感謝申し上げます。そして、保護者の皆様、ご子息ご息女のご入学を、心よりお祝い申し上げます。新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。高校生になった気持ちはいかがですか。新しい制服に袖を通し、自分が一回り大きくなったような、新鮮で嬉しい気持ちなのではないでしょうか。 

 本校には看護科と普通科という2つの課程があります。そこで皆さんに聞いてみたいことがあります。看護科の皆さんにとって、普通科のイメージとはどのようなものですか?逆に、普通科の皆さんにとって、看護科のイメージとはどのようなものですか。

 まず、最初に看護という仕事の意味について話をしたいと思います。私は2年前の令和5年の3月に、悪性リンパ腫というがんが見つかり、その後半年間の抗がん剤治療を受けました。それまで大きな病気をしたことがなかったので、病院のことをよく知らなかったのですが、病院の待合室や入院病棟には非常に多くの患者さんがいました。若者から老人まで、そしていろいろな仕事をしているであろう方々がいました。人間誰しも突然、病気になることがあるのです。そう、ここにいるすべての人は、いつか病院で看護師の方々に助けてもらうのです。普通科の皆さん、看護科の皆さんと一緒に、仲良く、学んでください。

 そして、看護科の皆さん、しっかりと勉強してください。5年後に専攻科を卒業すると、看護師として人を助ける立場になります。とても尊い仕事を目指してくれたと思っています。校長として誇らしく思います。そして感謝いたします。 

 つづいて学校での学びについて話をしたいと思います。皆さんはやがて社会人になって働くことになります。仕事をしてお金をもらうことになります。いったいお金とは何なのでしょうか。現代のお金、例えば1万円札や500円玉は製造するのに、どちらも約20円しかかかりません。しかし、1万円や500円として使うことができることはなぜなのでしょうか。

 人類は原始時代に、物々交換をして暮らしていました。山で暮らす人と海で暮らす人が、野菜と魚を交換するような生活です。その時代ではお金は必要ありませんでした。やがて人間はお金という虚構を創り出しました。虚構つまりフィクションです。お金は、腐らないので、時を超えて保管できる価値となりました。お金は、遠く離れた所でも交換できる価値となりました。お金は、「高い」「安い」ことで、あらゆる価値の比較ができるようになりました。そしてなにより、お金ができたおかげで、複数の人で分業しながら大きなものを作ったり、専門的な仕事だけを行う人が現れたりして、人間社会は大きく発展することになりました。ヒトはお金とおいう虚構、フィクションを信じられるようになり、衣食住を個人ですべて行っていた原始社会から、分業による近代社会へと進んでいったのです。

  次に、現代社会、この仙南地区の話をしたいと思います。今、日本では急速に少子高齢化が進んでいます。この仙南地域でも同様です。白石高校では総合的な探究の時間で、その課題を解決しようとしています。君たちは仙南地域の主役となって活躍することを期待されています。なぜ、高校生が主役なのでしょうか。大人の方がよく分かっているはずだと思いませんか?なぜ高校生が期待されているのでしょうか。

 それは、今の社会を作ったのは大人だからです。現代社会というフィクションを作り上げたのです。しかし、これまで正しいと信じられていた結果がこの人口減少社会です。いつの時代も、社会を変えようとするのは若者です。明治維新の時もそうでした。大人は失敗を恐れます。どうしても過去時代では正しかったやり方に縛られて、変えていこうとする発想が乏しいのです。仙南地域のみならずこの日本社会を将来変えていくのは、君たちの世代なのです。

 そして「成功」とは、ある程度の無謀さと、ある程度の無知な状態から生まれるものです。君たちには、知らないことの強さを発揮してほしいのです。失敗を恐れずに実践してみてください。

 大リーグで殿堂入りしたイチローは言っています。

「成功するまで、失敗し続けた人だけが成功者になる。」のです。

 さて、どうでしょう。お金の話や成功の話はいかがでしたか。知らないことを知るのは楽しいと思いませんか。勉強に対してネガティブな感情を持っている人がいるかもしれませんが、本来、学びは面白いものなのです。ぜひ、白石高校で知的に楽しん欲しいと思います。

 そして次に、新入生の心構えの話をします。友達についてです。今、皆さんは、これまでの小中学校の友人達と離れて、新しい集団に加わることに不安を感じているのではないかと思います。では、友人をつくるために、どうすればいいか知っていますか。

 友人をつくるためには、まず、自分のことを教えるのです。名前、出身中、部活、好きなこと....なんでもいいのです。人から何かを教えてもらったら、自分も教えなくてはと思うのです。これを心理学で「自己開示の返報性(へんぽうせい)」 Reciprocationといいます。白石高校で、緩く皆とつながり、その中で一生の友を見つけて下さい。

 そして高校にはいろいろな人がいます。そこで大切なのは、人から学ぶことです。先生以外に、先輩や友人から学ぶことが大切です。「学び」というのは勉強だけではありません。考え方であったり、振る舞いであったり、あるいは趣味やファッションも他の人から学んでいます。人は一緒にいることで、同じものに興味を持ったり、同じことをしてみたくなりします。みんなと同じだと安心するのです。これをHerding 効果、日本語で言えば同調行動といいます。

 同調行動として、白石高校では定期戦という伝統行事があります。みんなで白石高校の選手、先輩を応援します。大声で叫びます。驚くかもしれませんが大丈夫です。大きな声を出す経験はこれまで無かったと思いますが、だからこそ、経験して欲しいと思っています。苦しさも恥ずかしさも、みんな一緒です。Herding 効果(同調行動)をすることで、その後には、間違いなく、白高生としての強い絆が生まれます。これも大切な白石高校の伝統です。

 最後になりますが、白石高等学校 第16回生のみなさんの夢の実現に向けて、大いなる活躍を心から期待しまして式辞といたします。

宮城県白石高等学校 校長 若林春日