専攻科看護科入学式 式辞
不忘山が白く輝き、白梅の爽やかな香の中、沢端川には水が清らかに流れています。ここ宮城県白石高等学校にも春が訪れています。
本日は多くの保護者の皆様にご臨席賜り、専攻科入学式を挙行できることを職員一同、深く感謝申し上げます。
それから保護者の皆様、ご息女のご入学を、心よりお祝い申し上げます。
専攻科の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。ここで少し私の経験を話したいと思います。私はちょうど2年前の令和5年の2月に腸重積で入院しました。腸重積という病気を知っていますか。腸重積とは大腸の中に小腸が潜り込むという病気です。
疝痛という痛みでした。どんな痛みか説明できますか。そう、ナイフで刺されたような痛みです。ナイフで腹を刺した経験など、ないのですが確かにナイフが刺さったような痛みでした。その後、全身麻酔で大腸と小腸を40㎝程度切除し、繋ぎました。手術の後、摘出した回腸の中に悪性リンパ腫というがんが見つかり、その後半年間の抗がん剤治療を受けました。私はそれまで大きな病気をしたことがありませんでした。ですから病院のこともよく知りませんでした。
当たり前なのですが病院には、大勢の患者がいました。若者も老人も、ありとあらゆる職業であろう方々が病院の待合室に、入院病棟にいました。考えてみると当たり前のことなのですが、街で見掛けるすべての人々は歳をとり、いつかは病気になります。いつも電車で見掛ける人、街を歩いている人、あるいは親戚や家族の方々、周囲にいる人を、君たちは、いつかどこかの病院で看護師として助ける立場になるのです。
専攻科の皆さんは、とても尊い仕事を目指していると思っています。校長として誇らしく思います。そして深く感謝いたします。
次に「人に好かれる能力」について話したいと思います。「人に好かれる能力」とはどのような能力だと思いますか。
好感度・違います。
清潔感・違います。
服装のセンス・違います。
答えは、自分から人を好きになる能力です。先に自分が人を好きになることです。誰でも、心を開いて笑顔であいさつしてくれる人を、悪く思いません。
2年前、私は抗がん剤治療で髪の毛が全くない状態で校長をしていました。とても恥ずかしかったです。そして悪性リンパ腫について調べてみると5年生存率が70%ということを知り、一人になると、なんとも言えない後悔と不安で落ち込む日々でした。
そんな中で学校に行くと、元気に笑顔で挨拶してくれる生徒達に救われました。弱っている人にとって、笑顔をもらえることが、どれだけ心に響くのかがわかりました。ちょっとした笑顔で救われる人がいるということを知っておいてください。
最後に、専攻科と臨地実習の学びで大切にしてほしいことがあります。それは、すべての人から学ぶことです。先生から学ぶことはもちろんですが、先輩や友人からも学ぶことが大切です。「学び」というのは勉強だけではありません。考え方であったり、振る舞いであったり、全てのことは他の誰かから学び、身に着けたものです。これは社会人となって、病院に勤務するようになってからも同じです。一生、人から学び続けるのが人生です。専攻科の皆さん、これからできるだけ多くの人と関わり、いいと思ったことを身につけながら、素晴らしい看護師になって欲しいと思います。
最後になりますが、白石高等学校 看護科専攻科 第16回生のみなさんの夢の実現に向けて、大いなる活躍を心から期待して式辞といたします。
宮城県白石高等学校 専攻科 校長 若林春日