看護科の専門科目

 看護師となるために必要な学習内容の概要を、特に高校3年間を中心にまとめてみました。授業科目はすべて必修科目です。授業を受けて試験で合格することが必要です。もちろん、その後に国家試験が待っています。

基礎看護
 高校1~3年生で学習している科目です。学習内容は、高校1,2年生では看護概論と基礎看護技術の2分野、高校3年生では看護過程の展開、フィジカルアセスメント、学習-生産的な活動-レクリエーションの援助の3分野に大別されます。

 

【写真は高2年生の授業風景です。】

対象 分野 学習内容
高1年 看護概論  人間とは何か?健康とは何か?看護とは何か?看護師とは何か?という看護の基礎となる事柄について学びます。  基礎看護
基礎看護技術  看護師に必要な技術の習得と、その根拠(なぜそうするのか)を学びます。1年生では、手洗い、体位交換、ベッドメイキング、シーツ交換、寝衣交換、食事援助、入浴介助、洗髪排泄援助、身体計測など日常生活の援助について学習します。講義形式で必要な知識を身につけた後、技術習得のための実技演習を実施します。
高2年 看護概論  患者とより良い人間関係をつくる方法や、急性期・慢性期・回復期・終末期のそれぞれの過程における患者の特徴と看護の役割などについて理解を深めます。
基礎看護技術  2年生では診療における看護に関する基礎的知識と技術の習得が目標です。診察・検査をはじめ、無菌法や院内感染の予防、与薬などについて学習します。患者の生命に直接関わる実技展開が多くなり、手技も難しくなります。

高3年

看護過程の展開    患者を広い視野で観察し、問題点を明確にし、それに対する看護を計画・実施し、その看護が適切であったか適切でない場合はどうすれば良いのかを検討する「思考過程」を学習します。模擬患者を設定し、情報収集の仕方について実践的に学習します。

フィジカルアセスメント

   看護者が全体像の把握のために行う身体面・精神面・社会面・スピリチュアルな面などの情報収集のうち看護過程の始まりともいえる頭の先から足の先までの身体診査、を学びます。
学習,生産的な活動,レクリエーションの援助    患者が自立して健康管理すること、また療養中もその人らしく充実した時間を過ごすための生産的活動・レクリエーション活動が闘病生活にどのような影響を与えるのか、その必要性や意義、具体的援助方法について考えていきます。
看護専門基礎

 高校1~3年生と専攻科1~2年生の5年間で少しずつ学習していく科目です。

 学習内容は、8分野に大別されます(人体の構造と機能、疾病の成り立ちと回復の過程、栄養、感染と免疫、薬物と薬理、精神保健、生活と健康、保健医療と福祉)。

対象 分野 学習内容
高1年 人体の構造と機能  解剖生理を学ぶための基礎知識、消化器官と消化機能、呼吸器・循環器と血液循環、腎臓と尿の生成、自律神経系と内分泌について学習します。
生活と健康  健康問題、衣食住と生活環境、人口の動向や保健統計などについて学習します。
高2年 人体の構造と機能  骨格系、脳と神経系、皮膚、生殖について学習します。
疾病の成り立ちと回復の過程  病理の総論について学習します。先天異常・代謝異常・炎症と免疫、膠原病、感染症、腫瘍について学習します。
栄養  各種栄養素の代謝について学習します。さまざまな栄養素が消化酵素によって体内で分解された後どのように代謝・利用されるのかを学びます。
感染と免疫  感染症の原因となる病原微生物の基礎知識を学習し、人体の機能の中での免疫機能がどのように働くのかを学びます。 看護基礎医学
精神保健  心の働きと心の健康について学びます。看護の対象である人間の理解の基礎になる勉強ですが、自分の性格や行動を考える勉強でもあります。
高3年 疾病の成り立ちと回復の過程  主に、老化と死、移植療法、脳血管疾患、腎泌尿器疾患について学習します。
薬物と薬理  薬物に関する基礎知識、特に法的規制や薬理作用を主に学習します。
保健医療と福祉  社会保障制度と社会福祉、社会福祉の歴史、社会保障・社会福祉の動向について学習します。
専1年 ほとんどの分野について、さらに学習を深めます。
専2年 保健医療と福祉の分野について、さらに学習を深めます。
成人・老年看護
 高校2年から専攻科1年まで、老年看護は高校3年から専攻科2年までの3年間で学習する科目です。

 学習内容は、成人看護では2分野に大別され(1. 成人の生活と健康、2. 機能障害と看護)、それぞれに細かい項目があります。高校2・3年生では1. 成人の生活と健康の分野を学習し、専攻科では2. 機能障害と看護の分野を学習します。老年看護では4分野に大別され(1. 老年期の生活と健康、2. 高齢者の保健医療福祉の動向、3.高齢者の日常生活の障害と看護、4.高齢者の代表的な障害と看護)、それぞれに細かい項目があります。高校3年生では1. 老年期の生活と健康、2. 高齢者の保健医療福祉の動向、専攻科では3.高齢者の日常生活の障害と看護、4.高齢者の代表的な障害と看護の分野を学習します。
 

 

 
対象 分野 学習内容
高2年 成人の生活と健康  青年期・壮年期の生活と健康 、生活と慢性疾患、成人の看護のアプローチの基本についてです。青年期・壮年期の心身の状態や生活・健康についての特徴 を学習し、それぞれの時期の生活と慢性疾患がどのように関わりをもっているのかを学びます。また 、生活と健康に焦点を当て、その人らしくあることを目指してアプローチするときの基礎になるキーワードを学習します。
高3年 成人・老年期の生活と健康  成人看護の特徴について学習します。2年生で学んだ慢性期看護に続けて、急性期看護、回復期看護、終末期看護について学びます。 さらに老年看護については老年期の生活と健康、高齢者の保健医療福祉の動向について学びます。 成人・老人看護
専1年 機能障害と看護  肝機能障害、呼吸機能障害、栄養摂取・代謝障害、内部環境調節障害、生体防衛機能障害、感覚機能障害、認知機能・コミュニケーション機能障害、運動機能障害、排泄機能障害、性機能障害のそれぞれにおける看護について学びます。また、高齢者疑似体験を通して生活の不便さ・生活上の危険・高齢者の気持ち等に気付き、どのような看護援助を行えば良いかを考えます。
高齢者の日常生活の障害と看護
高齢者の代表的な障害と看護
母性・小児看護

 高校3年から専攻科2年までの3年間で学習する科目です。

 学習内容は、6分野に大別されます(母性の健康と看護、母性の看護、新生児の看護、小児の健康と看護、小児の成長・発達と看護、小児の疾患と看護)。

対象  分野 学習内容
高3年 母性の健康と看護  テーマは「母性」と「正常な妊娠・分娩・産褥と看護」です。人間の性に関する概念を基礎に、母性とは何か、母性を護る施策、通常の妊娠・分娩・産褥期における母性の変化とその看護などを学習します。  母子看護
母性の看護
小児の健康と看護  基本的な小児の成長発達について学習します。また小児を家族や社会の中で相互作用を受ける存在としてとらえ、現代社会 の中の小児と家族について考えます。
小児の成長・発達
専1年 母性の健康と看護、母性の看護、新生児の看護、小児の健康と看護、小児の疾患と看護の分野について、さらに学習を深めます。
専2年 母性の看護、新生児の看護、小児の疾患と看護の分野について、さらに学習を深めます。
看護臨地実習
 この科目は、看護に関する各科目の学習によって習得した知識と技術を、臨床の場において実習することを通して、確認と定着を図り、また応用展開させることによって、専門的な知識と技術をより深め、相互に関連づけることをめざす科目です。高校2年から専攻科2年まで4年間通して履修します。

 実習受入に協力して下さる病院に出かけて、基礎看護臨床実習、成人看護臨床実習、老年看護実習、母性看護実習、小児看護実習、精神看護実習、 在宅看護実習、統合実習の8分野の学習をします。
 
実習時間一覧表(数字:時間数)
分野 高1年 高2年 高3年 専1年 専2年 合計
基礎看護学臨地実習   117 39 90   246
成人看護学臨地実習     117 45 135 297
老年看護臨地実習     78 90   168
母性看護臨地実習         90 90
小児看護臨地実習       45 45 90
精神看護臨地実習         90 90
在宅看護臨地実習       45 45 90
統合実習         90 90
合計   117 234 315 495 1,161


実習を終えた専攻科2年生の感想

  •  急性期の現場は何もかもが初めてで、ついて行くだけで精一杯でした。また患者様と接する時にもとても緊張し、何と声をかけていいのか分からず不安で一杯でした。その時先生から「あなたたちに伝えたい思いを患者様は持っているんだよ」と言われ、どうしてその思いに気づくことが出来なかったのかと、とても悔しかったです。言葉だけでない患者様の思いにいかに気づくことができるかが大切であり、常に患者様に関心を向け、患者様の変化に気づいていかなければならないと学びました。(急性期実習記録より抜粋)

  •  私はこの実習で初めて自分の死生観や看護観と真っ正面から向き合えたと思います。毎日、自分が今日行ったケアはこれで良かったのか、と振り返ることができたからです。患者様が不安を感じている時に安心感を与えるには何をすれば良いのだろうと悩んだりもしましたが、タッチングや声がけという方法以前に、“患者様のそばにいる”だけでも人のぬくもりを感じてもらえ、安心感につながることを知りました。患者様のそばで背中をさすったり、声をかけることしかできなかった私に「ありがとう、いい看護師さんになってね」と言ってくれて患者様の言葉の一つ一つを忘れずに、これからも頑張っていきたいです。(終末期実習記録より抜粋)

  •  外来の時から関わっていた産婦さんの分娩に立ち会わせていただきました。終盤、陣痛が強くなり胎児の頭が見えてからはとにかく感動で、涙を流しながら「頑張れ!」と叫んでいました。一人の人間から小さな一人の人間が生まれてくる事にこんなにも感動するとは思いませんでした。お母さんやご家族に「いてくれてすごく助かりました」と何度もお礼を言われ、助産師の仕事の素晴らしさを感じました。自分も母からこのようにして産まれてきたと思うと感謝の気持ちで一杯になり、母は凄いものだとさらに実感しました。この実習で出産に対する思いが変わったように思います。(母性実習記録より抜粋)

▲このページのトップに戻る